【書評】「転職の思考法」現代で働く考え方を学ぶ

いかにして「働く」べきか?

世間では「働き方改革」がクローズアップされ、高度経済成長期より続いてきた大量生産や長時間労働からの転換期を迎えている現代。

また、一方で人生100年時代などとも呼ばれ、年金受給も繰り下げが検討されるなど人生設計も大きく変わりつつあります。

多くの方が、「働き方」ということに対して様々な考え方をされていることかと思います。

 

また、これから社会に出ようという学生の方々も、就活ルール撤廃について議論がなされるなど変化が激しい中で不安をお持ちの方も多いことかと思います。

かく言う私も偉そうなことは言えず、学生時代は勉強らしい勉強もせず、将来のことは現実逃避してB級映画を見続けるという恥ずかしい日々を過ごしておりました。笑

 

しかし、変わりゆく日本社会、その中で働いていく上で、この変化をしっかりと見極め、対応することこそが何よりも大切なことかと思います。

そして、今回紹介する書籍も、その働き方の一つである「転職」にフォーカスしたこちらの内容です。

 

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法

 

 「転職の思考法」ー転職は「悪」?

という訳で今回こちらの「転職の思考法(著者:北野唯我)」が非常に面白かったため紹介いたします。

実はこの書籍は何となく面白そうと思って買った前2冊とは異なり知人から勧められて買ったものです。

ですので、私がすごく転職したいという訳ではないので念のため。笑

 

 本書の著者の北野氏は博報堂ボストンコンサルティンググループを経て、現在就活サポートを運営している「ワンキャリア」に参画し「職業人生の設計」の専門家として名を馳せている人物です。

冒頭記載の通り変わりゆくある日本社会ですが、一方でそうしたキャリア設計の現場に携わる著者は本書で次のように述べています。

現代は、二人に一人が転職する時代ですが、いまだに「転職の話を社内ですること」はタブーとして扱われることが多いのも事実。この本を通じて成し遂げたいのはまさにこの「タブー」の破壊です。ー転職の思考法より抜粋

実は私も同じ金融業界ながらに数年前に転職を経験したことがあります。

幸い円満に退職することができましたが、やはり転職を決めて話をしたときには後ろ向きに受け取られることが少なくはありませんでした。

 転職を「悪」とみなす、この文化は多かれ少なかれ残っているのかもしれません。

 

本書の特徴は、「転職」にベースを当てているものの単なるハウツー本に留まらない点にあると感じます。

タイトル通り「思考法」に焦点を当てているため、「転職」というテーマを基準に現代で働く上で一社会人として何を重視すべきであるかを描いています。

ですので知人が私に紹介したように、転職を考えている人はもとより、働く上で悩んでいる人、またこれから社会に出る学生の方など様々な人に気づきをもたらす内容となっております。

 

転職して数年が経つ私ですが、転職時の判断は振り返っても間違ってはいなかったなぁと思います。

ただ一方、転職する前に本書と出会っていたら、果たして同じ選択をしたであろうか。

ついしんみりと考えさせられる内容です。

 

本書の構成は特徴的で、転職をテーマに物語形式で話は進んでいきます。

主人公は印刷業界で営業職をしている30歳の男性。

現状の仕事に漠然と不安を感じながら日々を過ごしていきます。すごい共感笑

そんな中、著名のコンサルタントと出会ったことが大きな転機となり転職を志す、非常にシンプルな内容だからこそ思わず読み入ってしまいます。

 

自分の市場価値を求めて

このシンプルな物語の中に多くの気づきや学びが得られます。

その中でも特にためになったと感じた点、それは全編通して描かれている自らの市場価値、「マーケットバリュー」についての考え方です。

マーケットバリューがある人間には、自由が与えられる。好きなときに会社を辞めることができるし、好きなところで働くことができる。・・・中略・・・ マーケットバリューは①技術資産、②人的資産、③業界の生産性の三つで決まる。ー転職の思考法より抜粋

 すなわち「専門性」や「経験」などの技術を高め、人との交流を深め、そしてその業界自体が盛況な場合自分の「マーケットバリュー」が最大限に高まるという教えです。

 本書では、この「マーケットバリュー」についてをより詳しく解説し、現代で働く上での指針を示してくれます。

 

個人的には他の項目ももちろんですが特に業界の生産性については改めて気づかされる内容となりました。

特にこれまで終身雇用が基本であった日本社会において、転職をしたとしても以前と同じ業界内で転職したという人も多いのではないでしょうか。(私はそうでした。)

しかし、自分の「マーケットバリュー」を考える上では、ときに業界を超えて行くことも考えるべきであるというのは至極最もであると感じられたのです。

 

特にバブル期以降決して好況とは言えない日本社会。

人口とともに経済も縮小する中で斜陽産業と呼ばれる業界も増えてきているように思います。

そうした世の中であるからこそ、その中で規模を拡大している業界に身を移し市場価値を高めていくという考え方は今後ますます意味を持つように思えます。

 

特に私もそうでしたが転職をすぐに考えている人の場合、現職に対して何かしらの不満を持っていることが多いため、なかなか冷静に判断をつけられないケースも多いかと思います。

そうした中で本書は、転職におけるブレない判断軸を示してくれるため、現代社会で働く上での「教科書」と表現して良いかもしれません。

 

 転職という「選択肢」を持つ

もう一つ、これは私自身転職をしたからこそ非常に共感できた一節があります。

「その日はじめて彼は言えたんだよ。理不尽な上司に、ノーとな。『会社を辞める』という選択肢を手にしたからだ。」ー転職の思考法より抜粋

自分の弱さを打ち明ける主人公に対して、コンサルタントの黒岩が諭した際のセリフです。

職場で何も行動が出来なかった若者が、辞表を用意したことで変われたことを語ります。

すなわち、人は今いる会社という居場所から離れられない、辞められないという風に思い込んでいるだけであると。

 

これは私自身も経験したことがあり、まさにその通りだと思わず唸っていました。 

 特に、転職が後ろ向きに捉えられがちな現代では、どうしても辞められないという先入観に縛られてしまいがちだと思います。

私も、辞められないと思いながら仕事をしている時は、「どうすれば成果が出せるか」焦りや苛立ちが募るばかりの日々を過ごしていました。

息苦しく感じられるような日々を過ごす中で、実際に転職という「選択肢」を選ぶことを決めた時は、スッキリした気持ちになり仕事も前向きに取り組めるようになっていました。

 

本書でも書かれていますが、必ずしも転職が正解であるというわけではないと思います。

ただし、日々仕事をする中でも「選択肢」を持つこと、これが自身を前向きにする原動力になり得ると思います。

 

そんな「選択肢」を持つための判断軸をもたらしてくれる、本書は正に転職市場がますます盛り上がっていく中での道しるべであるといえます。

ではまたの日に。